その後、ときどき佐喜知庵を訪ねましたが、休館日だったり貸切だったりで、
なかなか機会に恵まれませんでした。
そして一年ぐらい経ったある日... やってる、やってる。
今日こそ久しぶりに魔王と対決できるかもしれぬと胸が高鳴ります。
実は、今日はカミさんと一緒です。
因みにカミさんは、いささか茶道の心得があるため、佐喜知庵についての
小生の話に興味を持ち、というか用心棒としてというか、ともかく同行したわけです。
玄関を入ると、奥の方から賑やかな笑い声が聞こえてきます。
今日はどうやら客が沢山来ているようです。
しばらく待っても、誰も出てくる様子はありませんでしたので、
またまた勝手に上がりこみました。
確かここを曲がると廊下に出て、そろそろ気をつけないと
音もなく襖が開いて...。 何も起こりません。
例の部屋に入ってみると、不思議なことに客は一人もいません。
では、一体この笑い声は...
とにかく、部屋の中に座って、カミさんと二人でしばらく待ちましたが...
何も起こりません。
文字通り痺れを切らして、襖一枚隔てた隣の部屋を覗いてみると ~、 驚くべし!
和服できっちり武装した4~5人の茶道関連らしきおばさま方が、
客が入って来たのにも気づかず、内輪の話題で大いに盛り上がっていたのです。
「あのー、お茶が飲みたいのですが。」 こう訴える小生を見て、
茶道おばさまの一人が、「はい、はい。 少しそちらでお待ちください。」と
悪びれた様子もなく答えます。
また座りなおして、しばらく待っていると、先程の茶道おばさまが、
奥から持ってきた菓子と茶碗を我々の前に置き、「どうぞ」というなり、
そそくさと隣の部屋に帰っていきます。
そして、小生とカミさんが、仲間外れにされたいじめられっ子の風情で
黙って抹茶を飲んでいる間中、隣の盛り上がりは一向に治まらなかったのです。
これは一体なんだ。 魔王はどうした。 (つづく)
コメント
[…] 小生が、用心棒抜きでひとりで出かけた、比較的小規模な大寄せでのことです。 […]