さすらいの茶人 茶道

さすらいの茶人_3(意地悪な茶碗)

伝想庵の中門

 小生の前に運ばれてきたのは茶碗です。 ただ、 とても小さいのです。
これはおかしい、これはどう見ても湯のみ茶碗だ。 ひょっとすると
小生にだけ意地悪をしようとして... 
 周りの様子を窺いますと、みんな意地悪をされています。

 平然としている客もいますが、小生の隣のヴェテランが明らかに
動揺しているのを、小生は見逃しませんでした。

 やれやれ。 何とか切り抜けられそうだ。 
 思いがけない出来事に、それまでの張りつめていた空気が破れ、
招かれざる客のことなど、いまや重要課題から外されたに相違なく、
これで小生も、少なくとも湯のみ茶碗に関しては、隣のヴェテランと
同等のレベルで驚いていればよいのですから。 正直ほっとしました。

伝想庵の庭

 ことの真相はこうです。
この伝想庵には、平日の午後あたりは、ちょいとした稽古代わりに、
比較的上級者が顔を出すことも多く、それがあの厳しい空気の原因でした。

 ところが今日は、特別に「煎茶道」(煎茶を嗜む文化もしくはお稽古ごと)の
師匠が担当で、煎茶のお点前というものがあり、湯のみのような小さな茶碗に
玉露か何かの有難いお茶を入れたものが運ばれて来たというわけです。

 多分どこかに、本日の特別な催しについての注意書きがあったのでしょうが
小生や、隣のヴェテランは全然気付かずにいたため、意地悪...じゃなくて
何事が起ったかと、大いに驚いたのでした。 (つづく)

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コメント

  1. mako より:

    面白かった。  まとめて読んでしまったけど。
    一話づつ(えっどうなるの?)と思いつつ読みたかったです。

    映画にしたら面白いのでは・・・
    主人公はストイックな40歳ぐらいで、30年後にやっと魔王と再会
    ところが彼女は用心棒の(過去)だったのです。じゃんじゃん

  2. kitapon より:

    えっ、30年後の魔王が実は用心棒の過去?
    う~む、とても難解な...。

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