魔王ふたたび_9(魔王の実体)
「私、Kでございます。 どちら様でしょうか。」
小生の隣には、いかにも茶人の風格を漂わせた年配の御婦人が
座って、小生に不思議そうに問いかけているのです。
「私、Kでございます。 どちら様でしょうか。」
小生の隣には、いかにも茶人の風格を漂わせた年配の御婦人が
座って、小生に不思議そうに問いかけているのです。
相手はさすがに魔王です。 ひらりひらりと小生の攻撃をかわして
いるようにみえます。 それにしても、自分のやっていることをよ~く
振り返ってみると_ これは、まるでストーカーではないか。
「K(先生)は先ほど急用ができたため、急いで帰りました。」
お運び先生のこの言葉は、小生が全く予想もしないものでした。
その話ぶりから察するに、どうやら親戚に不幸があったような
雰囲気です。
こういうことって、本当に有り得るのか?(あるのです)
ゴールデンウイークの初日に、小生は他の計画を全部取りやめて、
K先生に会うために佐喜知庵に出かけることにしました。
当日の朝、念の為に佐喜知庵の事務所に電話を掛け、本当に
今日の担当がK先生であることを確かめるのも忘れませんでした。
深夜に、娘が突然体調を崩しました。
ずっと吐き気と腹痛がひどくて苦しそうです。
夜間の緊急診療所で、とりあえず薬をもらったあと、紹介された
病院で点滴などを受けましたが、朝になってもまだ熱が下がらず、
すぐには回復しそうにありません。
小生はこのブログの中で、たまたま茶道に関する話を書いていますが、
もちろん茶道のプロでも熱烈な茶道崇拝者でもありません。
いやそれどころか、ご存知のように小生は茶道に関して全くの素人で、
普段は茶道とはおよそ無縁の生活を過ごしており、何年もの間、茶道と
一切の関わりが無かったとしても、それでどうということもない_
といったような毎日を送っているのです。
小生の心の中で、今や教祖か預言者かのような存在と化していて、
それでいてどうしても再会することのできぬ「佐喜知庵」の、謎の師匠
についてのお話の続きです。
まだ茶道について何も知識が無かった小生を、不思議な魔力で
茶道の世界にいざなった_ 佐喜知庵の「魔王」。
かの師匠との出会いを思い出すたびに、小生は懐かしさとともに、
「どうしてもう少し手がかりを残しておかなかったのか」という悔悟の
念を禁じえないのです。