キャンディーズ_１６（思いがけぬ大敵）

「1階 1列 31番」！　間違いありません。小生に当たった席は、1階の1列なのです。
念のために会場のホームページで座席を確認したところ、とんでもない位置です。1階の1列目というのは真ん中あたりの(20番～31番の)席だけしか無く、この12席だけが舞台へ向けて飛び出しており、どう見てもここは来賓用か家族用の特別席としか思えません。

小生は普通に（先行予約を）申し込んだだけです。特別にコネを使ったり（そんなものは持っていませんが）、裏金を使ったりしたわけではないのです。それでも、こういう席に当たることって、あるのですねぇ．．．。
　とにかく、これはいけない。もう後にはひけません。小生の人生においてこれ以上の「当選」は2度とないでしょう。もし、この状況で小生が何やら理屈を付けて、このコンサートに行かなかったら、これはいかにも運命の神様の顔に泥を塗ることになるかもしれません。覚悟を決めた小生は後先考えずにさっそく購入の手続きを済ませました。コンサートはほぼ2か月後の2月24日です。小生ぐらいの歳になると、2か月もあると体のどこかに変調を来たして、当日は入院していた＿などということが大して珍しくはないので、そんなことの無いように、体調管理に気を付けて過ごさねばなりません。　＿と、まるでオリンピック選手のようです。（いや、遠足を控えた小学生か？）
　ところがこの時、思いがけない大敵が忍び寄っていたのです。

　2020年1月に中国で確認された新型コロナウイルスが1月15日に日本国内で初めて感染確認されました。そして2月3日に乗客の感染が確認されたクルーズ船が横浜港に入港したあたりから、どうやらただ事では無いとの認識が広がり、2月15日には大阪にあるライブハウス（でのコンサート）で、集団感染が確認されるという事態に至ったのです。
　問題の名古屋公演は2月24日です。果たして予定通りにコンサートは開催されるだろうか？
2月15日の東京公演は無事に実施されましたが、その前後になると、そろそろ自主的に中止されるイベントの記事が目立つようになってきました。例えば2月20までには、以下の中止が発表されています。
　「02/23：天皇誕生日の一般参賀」
　「02/23：国技館：５千人の第九コンサート」
　「03/01：東京マラソン：一般参加中止」
　「03/08：名古屋ウィメンズマラソン：一般参加中止」
　「４月：中国公演：嵐コンサート」
このころになると、どこのドラッグストアでもコンビニでも、マスクや消毒用ティッシュなどが店頭から姿を消してしまうというパニック状態が発生しています。

　いや～　この時は本当にヒヤヒヤ、ヤキモキしました。普通であれば中止もやむを得ずと諦めるところですが、今回は何しろ二度となさそうな席が当たっているため、中止はいかにも残念です。因みに、チケットのリセールサイトを見ると、東京公演では「1階3列」のチケットが1枚(￥9,000のところ)何と￥48,000で取引されているではありませんか。いや、儲けようというのではありません。それほど貴重なチケットだという話です。
もし中止になって、再公演が決まった場合に果たして同じ席を保証してくれるものだろうか、やはりもう一度抽選のやり直しだろうか＿　などと、心配性の小生はもう先の心配をいろいろしていたものです。

　結局、名古屋公演は実施されたのですが、翌々日の2月26日には、TVで内閣官房長官による、イベント自粛要請の発表があり、これを受けて同日の午後には東京ドームでのライブなど各種のコンサートが、当日中止となった。つまり、2月24日の「伊藤蘭の名古屋公演」は、公演可能な本当にぎりぎりの日程だったのです。もちろん、その後に行われる予定だったその他の6都市での（伊藤蘭の）追加公演は全部中止になりました。

　ということで、散々心配して公演当日を迎えた小生は、コンサート会場に到着してもまだ、公演の中止などを知らせる看板が出ていないかと、恐る恐る確かめた後、やっと安堵の胸をなでおろしたのでした。

　5時開場、6時開演です。5時少し前に会場に到着したら、もう５０ｍ程度の行列ができていました。
さっそく列に並んで周りを見渡すと、いい歳をした「おっさん」がたくさん集まっています。それでもみんな小生よりは若そうに見えます。さすがにちょっと恥ずかしい気もしましたが、なに、普通の人から見れば、彼らと小生はまさに「五十歩百歩」のお恥ずかしい存在でしょう。

　ところで、現在（2021年4月）の状況と違って、この頃はまだまだマスクをしていない人も結構見かけたのですが、この日は、かなり多くの人がマスクをしていたようです。そして、ありがたいことに声出し（声援を送ったりする行為）は特に禁止ではありませんでした。これはとても重要なことなのです。だって声援禁止であれば、「ランちゃんコール」が出来なくなってしまうのですから。　（この項つづく）