キャンディーズ 音楽

キャンディーズ_11(奇跡のファイナル)

 1978年4月4日。当時の後楽園球場でキャンディーズのラストコンサートである「ファイナルカーニバル」が、当時としては想像を絶する5万5千人もの観客を集めて行われた。しかもこれは必死にプロモートして集めた人数ではないのです。 チケットは、現金書留で代金を先に送って、抽選に外れたら返金するというちょっと信じられぬような方式で販売されたのですが、またたく間に10万人分もの現金が集まってしまい、当選した5万5千人分以外はまた現金書留で返送したということです。さらに当日は、チケットを入手出来なかったファン達が何万人も球場を取り囲んでいたと言います。

当日の後楽園球場(朝日新聞デジタルより)

次の動画は、その当日の様子を伝える(お堅い)NHKのニュースです。
≪「 NHKニュース」YouTube KEN’s Video Channel より≫

 当時、日本ではまだあまり無かった、野球場を使っての公演のため、設備も現在に比べると誠に貧弱なものであったようです。例えば、後ろの席からはキャンディーズは豆粒ほどにしか見えないのでそれを補うため、(今日のライブでお馴染みの巨大なスクリーンなどはもちろん無いので)26インチ!!程の街頭テレビが幾台か設置されたとか(今なら家庭用TVでも40インチくらいありそうですが)、舞台の一部がキャンディーズの3人を乗せたまま中央まで移動するような舞台演出を実現するために、舞台下にいる300人のスタッフが、みんなでロープを引っ張った(これではまるで奴隷船ですよね)などと、今日では到底あり得ぬような話がいろいろと伝わっています。
 また、当日は朝から雨模様で、ここはドーム球場ではありませんから、関係者は皆「雨が降ったらどうすんだ?」とヤキモキしていたそうです。幸い隣の神宮球場までは雨が降っていたのに、後楽園球場は何とか雨にはならなかったとのことで、この辺りの話は何となく「忠臣蔵」の討ち入りの夜を連想してしまいます。

 ところで、舞台はプロ野球のスケジュールの合間を縫って設営したため、ステージが完成したのは公演直前で、そこでのリハーサルの時間は当日正午からの約3時間しかとれなかったという。そんな悪条件の中で、最終的にキャンディーズは4時間にわたって(途中ほとんどまともな休憩無しで)50曲近くを歌いきるという離れ業をやり終えるのです。(そんな無茶なスケジュールを作ること自体が非常識と思いますが)
 因みに、同じ日に武道館で行なわれた、当時のスーパーグループのフォリナーの初来日公演は、約1時間半で12曲だったそうです。
 尚、この日の模様は、3日後にTBS系列で全国に録画収録でテレビ放送されたが、平均視聴率32.3%(関東地区)という単独アーティストによる音楽番組としては歴代1位の視聴率を獲得しています。

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 さて、17時17分に始まったコンサートは、例のごとく洋楽のカバーから始まったが、いきなり洋楽13曲ぶっ通しで、TVのキャンディーズしか知らないようなヤワなファン達の度肝をぬいた。

次の動画は、その中の一曲でオールドロックファンには懐かしい「Do You Love Me」。合いの手はMMPが入れている。
≪「DO YOU LOVE ME」YouTube Miki Qazpoi より≫

 続いてキャンディーズのシングル曲やアルバム曲を14曲、その次はソロコーナーで(ここで観客もちょっと一息入れたといった雰囲気で)、3人がそれぞれ作詞・作曲した曲を趣向を凝らした衣装で数曲ずつ歌った。

ラン、スー、ミキのソロコーナー(YouTubeより)

 そして、後にファイナルカーニバルを表す写真に最もよく使われる印象的な衣装に着替えた3人は、そのあと最後までステージ上から離れることは無く、残りの16曲を喉も裂けよとばかりに歌いまくった。
 モニター設備もほとんど無いに等しく、彼女たちは自分の声も他の2人の声もMMPの演奏の音もまともに聞こえぬ状態のなか(だったそうです)で、しっかりと歌い見事にコーラスを聴かせたのですから、今更ながらその実力には驚かされます。

 次は、シングル曲の「哀愁のシンフォニー」をしっかり歌っている動画です。
≪「哀愁のシンフォニー」YouTube Miki Qazpoi より≫

 いやしかし、うまく歌ったとか、コーラスがどうとかいう前にとにかく、彼女たちはあの小さな体で寒空の中、4時間、48曲を大観衆相手に歌い切ったのです。まさに「奇跡のコンサート」と表現しても許されるかもしれぬ(「奇跡のスタミナ」か)と、小生には思われるのですが...

 そして、最後に一人ずつ挨拶をした後、最後の曲として例の「つばさ」を歌い、「本当に私たちは幸せでした」の言葉を残してファンの前から消えて行きます。

 その様子は、次の動画でご覧ください。
≪「つばさ」ニコニコ動画 より≫

涙のエンディング(traola Twitterrenより)

 こうして、一つの時代が終わりました。以降3人が一緒に舞台に立つことは「二度と」ありませんでした。
今考えると、
キャンディーズという(関係者も含めた)集合体は、デビューし、アルバムを作り、コンサートを開き、TVでコントを演じ、解散宣言のドタバタを引き起こし、そして再起したのですが... それらは全て、この最後のコンサートをやり遂げるというゴールにたどり着くために必要な通り道だったのかもしれない_ ような気がします。

(キャンディーズは解散しても... この項つづく)

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コメント

  1. マコ より:

    クーッ 
    奇跡のコンサート素晴らしい!
    奴隷船・ヤワなファン・忠臣蔵の表現に笑いながら読みました。
    しかし50曲を歌いきるなんて驚き!
    スーパーアスリートの体力以上ではないでしょうか。
    オープニングの選曲は抜群ですね。

    燃え尽きたことなんてないので分かりませんが
    3人はやったんですよね。
    読んでるだけで疲れました(笑)

    • kitapon より:

      よく考えてみると、バックのMMPなどはそれこそ全く休み無しに
      4時間ぶっ通しで演奏しているわけで、その他のスタッフも含めて
      この時は関係者全員が完全に別世界にぶっ飛んでいたのかも
      しれませんね。(4時間も熱狂していたファンも含めて)

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