ある夜、カミさんが突然苦しがって、呼吸も困難になるということが
ありました。 慌てて救急車を呼び、病院へ運んだのですが、結局
これはいわゆる「過呼吸」の症状で、大したことはなく、入院もせずに
帰宅できるほどで、やれやれといったところでしたが、 このとき_
全然別種類のトラブルがあったのです。
(写真は本文とは関係ありません)
救急車が我が家に到着すると、救急隊員はまずカミさんの容体を
調べ、いきさつなどを聞いた後、カミさんを担架に乗せて2階から
降ろして救急車に乗せ、そしてやおら救急隊員が小生に言いました。
「はい、ご主人も乗ってください」
「えっ.. いや、私は自分の車で後から付いていきます」
「いいえ、奥さんの横に乗ってください。すぐ出発します。」
さすがにこの状況で、車に酔うから乗りませんとは言えなくなり、
やむを得ず、カミさんが寝かされている横に乗り込んだのですが、
救急車の構造上「体を横にして」、狭い車内とて「体を折るようにして」
座らなければならず、「こりゃあかん」と思う間もなく救急車が走り出す
やいなや、案の定あっという間に小生は酔ってしまいました。
「すみません。 ちょっと停めてください。」 「ハァ?」
「いや、気分が悪いのでそこで降りますからすぐ停めてください。」
「そういうわけには行きません。病院に着くまで待ってください。」
そのうちに、寝ていたカミさんまで加わって、「あの~、この人はひどく
車酔いするんです。降ろしていただくわけには...」「いや、もう少し
ですから我慢してください。」 などと押し問答しているうちに病院に
着きました。
転げるように救急車から降りた小生は、駐車場のコンクリートの上に
座りこんでしまったので、救急隊員もびっくりして様子を見にきます。
(写真は本文とは関係ありません)
結局、カミさんが元気になって、もう帰ってもよくなってからも、小生は
病院の待合室のソファから起き上がれず、やっと帰宅できたのは、
その後数時間経ってからでした。
後で考えてみると、救急車の中で苦しんでいるカミさんを放っておき、
自分の車酔いに必死になっている小生を見て、「何と薄情な旦那だ」と、
救急隊員もあきれていたに違いありません。
そういえば、娘がまだ幼稚園児の頃、家族でテーマパークへ出かけた
時に、どこでどう間違えたか「暗闇の中を縦横に疾走する危ない乗り物」
に小生と娘とが乗ってしまったことがありました。
この時も、隣で泣き叫ぶ娘などには目もくれず、小生は自分の乗り物
酔いと必死になって戦っていたのを覚えています。
普通、一家の主たる者は、危機に臨んでは己を顧みず、命を懸けて
家族を守るものである...ような気がします。 しかし、これは小生には
当てはまりません。乗り物酔いが相手では、あっけなく家族を見捨てて
逃げ出してしまうのです。 (この項つづく)
コメント
お気の毒と思いながら楽しく読みました。
決定打の(5)は本当にお気の毒でしたが
笑いこけました。
ゴメンナサイ
乗り物酔いの話はどれも、その時は悲劇のはずが、
後から思い返すと、どうも喜劇になっているような...