閑話諸口

乗り物酔いの顛末_5(救急車とまらず)

ある夜、カミさんが突然苦しがって、呼吸も困難になるということが
ありました。 慌てて救急車を呼び、病院へ運んだのですが、結局
これはいわゆる「過呼吸」の症状で、大したことはなく、入院もせずに
帰宅できるほどで、やれやれといったところでしたが、 このとき_
全然別種類のトラブルがあったのです。

救急車1
    (写真は本文とは関係ありません)

救急車が我が家に到着すると、救急隊員はまずカミさんの容体を
調べ、いきさつなどを聞いた後、カミさんを担架に乗せて2階から
降ろして救急車に乗せ、そしてやおら救急隊員が小生に言いました。
「はい、ご主人も乗ってください」
「えっ.. いや、私は自分の車で後から付いていきます」
「いいえ、奥さんの横に乗ってください。すぐ出発します。」

さすがにこの状況で、車に酔うから乗りませんとは言えなくなり、
やむを得ず、カミさんが寝かされている横に乗り込んだのですが、
救急車の構造上「体を横にして」、狭い車内とて「体を折るようにして」
座らなければならず、「こりゃあかん」と思う間もなく救急車が走り出す
やいなや、案の定あっという間に小生は酔ってしまいました。

「すみません。 ちょっと停めてください。」 「ハァ?」
「いや、気分が悪いのでそこで降りますからすぐ停めてください。」
「そういうわけには行きません。病院に着くまで待ってください。」
そのうちに、寝ていたカミさんまで加わって、「あの~、この人はひどく
車酔いするんです。降ろしていただくわけには...」「いや、もう少し
ですから我慢してください。」 などと押し問答しているうちに病院に
着きました。

転げるように救急車から降りた小生は、駐車場のコンクリートの上に
座りこんでしまったので、救急隊員もびっくりして様子を見にきます。

救急車3
    (写真は本文とは関係ありません)

結局、カミさんが元気になって、もう帰ってもよくなってからも、小生は
病院の待合室のソファから起き上がれず、やっと帰宅できたのは、
その後数時間経ってからでした。

後で考えてみると、救急車の中で苦しんでいるカミさんを放っておき、
自分の車酔いに必死になっている小生を見て、「何と薄情な旦那だ」と、
救急隊員もあきれていたに違いありません。
そういえば、娘がまだ幼稚園児の頃、家族でテーマパークへ出かけた
時に、どこでどう間違えたか「暗闇の中を縦横に疾走する危ない乗り物」
に小生と娘とが乗ってしまったことがありました。
この時も、隣で泣き叫ぶ娘などには目もくれず、小生は自分の乗り物
酔いと必死になって戦っていたのを覚えています。

普通、一家の主たる者は、危機に臨んでは己を顧みず、命を懸けて
家族を守るものである...ような気がします。 しかし、これは小生には
当てはまりません。乗り物酔いが相手では、あっけなく家族を見捨てて
逃げ出してしまうのです。 (この項つづく)

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コメント

  1. mako より:

    お気の毒と思いながら楽しく読みました。

    決定打の(5)は本当にお気の毒でしたが
    笑いこけました。
    ゴメンナサイ

  2. kitapon より:

    乗り物酔いの話はどれも、その時は悲劇のはずが、
    後から思い返すと、どうも喜劇になっているような...

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