魔王ふたたび_1(未完の物語)

 まだ茶道について何も知識が無かった小生を、不思議な魔力で
茶道の世界にいざなった_ 佐喜知庵の「魔王」。
 かの師匠との出会いを思い出すたびに、小生は懐かしさとともに、
「どうしてもう少し手がかりを残しておかなかったのか」という悔悟の
念を禁じえないのです。

   佐吉庵-1      

 佐喜知庵の魔王については、「茶道を覗けば_4」以降に詳しく述べて
いますが、かなり昔の話しであり、今ここで少しご説明しておきます。

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   それまで、茶道とは全く無縁であった小生は、ふとしたことから、
  「佐喜知庵」という茶室に迷い込み、たった一人の(呈茶の)客
  として、ここで生まれて初めて点前なるものを目の当たりにし、
  また、明らかにしかるべく立場の師匠と思われる、ご年配の婦人
  から掛け物や道具の説明を受けながら、必死になって菓子を食べ
  抹茶を飲むという、悲劇的な(そしてまた何か魅力的な)時間を
  過ごしたものでした。
   そして、これをきっかけに茶道というものに興味を持った小生は、
  それ以降、茶道に関していろいろな体験をするわけですが、折に
  触れ、その師匠(魔王)のことを懐かしく思い出しているのです。
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 その後何度も、ひょっとすると魔王に会えるかも知れぬと期待しつつ
「佐喜知庵」を訪ねているのですが、15年近く経った現在に至るまで、
残念ながら再会の機会に恵まれていません。(佐喜知庵では、呈茶を
担当する社中が毎回入れ替わるというシステムになっている)

 会ってどうしようというものでは無いのですが、あの「事件」の後、
小生が茶道に関してどのように感じ、その後どのように茶道と関わって
来たかを話せたら_ いやいや、そんな大それたことではなくて、ただ
あの訳のわからぬ悪夢のようなひと時を、もう一度やり直せたら_ 
もしくは、もう一度お会いして一言お礼を言うことができれば、それで
自分の心の中でずっと未完であったこの物語が完結するような_ 
そんな思いをいだいているのです。

   佐吉庵-2

 もちろん、どうしたら魔王の担当の日を知ることができるのか、
それなりに調べようと思ったこともありました。
 しかし、佐喜知庵の事務所に問い合わせようにも、魔王の本名も
流派の名前も、さらには何と最初に訪れた日時さえ解らぬのでは、
(もちろん、目撃者も遺留品も無いので)捜査のしようも無いでしょう。

 それに、当時かなり御年配であったことを考えると、たとえお元気で
あったとしても、もう茶道界からは引退されている可能性も高いのでは
ないかとも思われます。

 そういうわけで、小生はもう魔王との再会を諦めているのはもちろん、
最近では佐喜知庵へ行っても、そのことを思い出すことはほとんど無い
ような状態だったのです。                (この項つづく)

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