さすらいの茶人 茶道

さすらいの茶人_10(非日常へのワープ)

鶯宿亭の小間

 小生は以前、別の茶室(伝想庵)の小間へ座敷側から案内してもらった
ことがありますが、いわば休演日に舞台を裏から覗いたようなものです。
 ところが今回は違います。 客として招かれ、正しい入口から入って...
さて、どこが正しい入口かわかりません。

 きっと、右の障子を開けて入れば何も問題ないでしょうが、ここはやはり
左側の小さい入口(躙口)から、入ってみることにしました。

 何しろ、普通の感覚ではこんな無茶な出入り口は冗談としか思えませんし、
時々、この手の入口から無理矢理入ろうとしている人の写真などを見かけると
一体全体どうやったら、頭を打たずに中へ入れるのかとても不思議に思って
いたのです。 これはよい機会だ。 今日こそからくりが解る。

 そっと中を覗いて、誰もいないのを確かめてから、よし、今だ。
※!  やっぱり、頭を打ちます。 さらに背中あたりも擦りました。
きっと、みんな痛いのを我慢しているのに違いありません。

鶯宿亭の小間2

 どうにか中へ入って頭を撫でていると、反対側の入口から、
多分、先ほどのお女中が変身したと思われる女亭主が現れ、
例の如く挨拶が始まります。

 「小生、作法など何も知りませんが、抹茶は好きです。」 
この台詞が言えるようになってから、ずいぶんと楽になりました。

 そしてその後は、小生も一人客の気軽さからあまり緊張もせず、
気さくに振る舞う女亭主と談笑しながら、おいしく菓子とお茶を頂き、
当に充実したひとときを過ごすことができたのです。

 それにしても... いろいろな所があるもんだな。
と、つくづく思います。 丈山苑に初めて行ったときもそうでしたが、
ついさっきまで、普通の日常を過ごしていたものが、30分も経たぬうちに
予想だにしなかった別世界に身を置いているという、この何とも言えぬ
不思議な感慨こそが、この魔法にかけられたような非日常の体験こそが、
小生をして、さすらい人から抜け出せずにいる原因に相違ありません。

鶯宿亭の小間3
 
 そして、時々思うことがあります。
この小生が感じている非日常の感慨(300円程度の!)は、ひょっとすると、
何年も茶道に励んでいる人はいざ知らず、素人が味わうことのできる、
侘び茶の究極のものに、どこか通じているのではないか、 などと..。

 さあ、次はどんな世界へ ワープできるかな。 (つづく)

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