よく見ると、入る時に通ってきた小部屋に、芳名帳が置いてあります。
おっと、これに名前をかかなくちゃ。 なんといっても、今から始まる茶会の
たったひとりの出席者なんだからな、 小生は。
しばらくして、お女中の声がかかります。
「どうぞ、お庭を通って小間にお入りください。」
庭を通って? 小間へ入る? す、すごい。 これは本格的だ。
でも、どうやって庭へ降りたものやら。 とにかく、庭側の硝子障子を
開けてみると、 ちゃ~んと、草履が用意されています。
はて、どっちへ向かって行けば...なるほど、この石を伝って行くんだな。
もちろん、茶道の心得があるなら、こんなことは常識かもしれませんが、
さっぱり知らない分、かえって、ひとつずつが謎解きになっていて、
まるで、隠されたヒントを元に宝探しをやっているような楽しさがあります。
(この場所で、こんな風に考える人間もめったにいないでしょうが)
遠くに浮かぶ島々の絶景を眺めながら、石伝いに歩いて行くと、
はは~ん、これは知ってる。 ここで手を洗うのに違いない。
ハンカチなど持ち歩く習慣がないので、このへんでゴシゴシと。
さて、そろそろ...
おぉ、あった、あった。 ありましたよ宝物、じゃなくて、小間が。 (つづく)