魔王ふたたび_6(このまま帰れぬ)

 ゴールデンウイークの初日に、小生は他の計画を全部取りやめて、
K先生に会うために佐喜知庵に出かけることにしました。
 当日の朝、念の為に佐喜知庵の事務所に電話を掛け、本当に
今日の担当がK先生であることを確かめるのも忘れませんでした。

   佐喜知庵11

 これでよし。 佐喜知庵へ向かう車の中で、K先生に会ったら一体
何を言えばいいのだろう_ と、小生はいろいろ考えていました。
 「いや~お久しぶりです」などと言ってみても、先生は何も覚えて
いないに違いありません。 何しろ、15年くらい前に客として一度
お会いしているだけなのです。
 「実は、15年前にここでお会いしました。」と言ったとしても、それが
どうだというのだ。 いや、それよりも心配なのは、もし客が多ければ
K先生と話などしている機会は無いのではないか...。

 まぁ、いいだろう。 先生に会えさえすれば、それでいいのだ。
それで、未完の物語はやっと終了し、小生も心の片隅にあった
わだかまりのようなものがなくなるのだ。

 そんなことを考えているうちに、見慣れた佐喜知庵に着きました。
今日はあいにくの雨でしたが、つつじの赤が映えてなかなか風情が
あるような、ないような。

   佐喜知庵12

 例の玄関を入り、例の廊下を通り、例の部屋までくると_
やはり祝日のこととて、席には客が一杯です。

 部屋に入ってとにかくK先生を探してみたのですが、本日は点前など
なくて、奥の部屋から点て出しで運んでくる「お運びさん」が入れ替わり
顔を出すだけで、どう見てもその中にK先生らしき人はいません。
 それにしても、普通の呈茶の席などとは違って、「お運びさん」が皆
結構な年配の「先生」ばかりで、さすがはK先生の社中_かな、と感心
します。

 しかし、K先生は当然、席に顔を出されていると考えていた小生には、
この状況は想定外でした。 
 どうすればよいのか。 とにもかくにも菓子や抹茶を運んでこられる
先生の内のひとりに声を掛けて、K先生に顔を出して頂くより他に
手はなさそうです。

 う~む、なかなか言い出しにくいぞ。
抹茶を飲みながら、小生は声を掛けるタイミングをはかっているのです
が、満員のこととて、先生がたは皆忙しそうに立ち働いておられます。

   佐喜知庵13

 その間にも客が次から次へと入って来るので、狭い部屋の中に、もう
お茶を飲んでしまった客がいつまでもいたら、他の人の迷惑になります。 
いや、それは充分にわかっているのですが、でも、まさかこのまま帰る
わけにはいかない。 それでは何のために今まで苦労をして、やっとの
思いで今日ここにいるのか解らないではないか。 何が何でもK先生の
顔だけでも拝まなくては。

「あの~、K先生はいらっしゃいますでしょうか」
やっとの思いでこう切り出した小生に対して、その「お運び先生」は、
全く思いがけないことをおっしゃいました。

「あいにく K(先生)は、本日はおりませんが...」 (この項つづく)

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2 Responses to “魔王ふたたび_6(このまま帰れぬ)”

  • 久しぶりに拝見いたしました。
    とても楽しく軽快な文章で読みやすいので、つい時間を忘れて読みふけってしまいました。
    魔王先生にお会いできるとよいですね。
    お茶を続けていればいつか私も魔王先生になれるかなあと思ったり、身の程知らずなのかなあと思ったり、別に魔王なんてならなくても気楽にできればいいのかなと思ったり。
    楽しいだけでなく、色々考えさせて頂いております。

    コメント by 茶犬 @ 2014.05.27 火曜日 
  •  茶犬さんお久しぶりです。
    なかなか書けなくて、3ヶ月ぶりとか4ヶ月ぶりに投稿しておりますが、
     特にお茶に関する話題は、何と1年以上無かったことに気が付き、
    自分でもびっくりしています。
     実は、魔王に...  と、ここで書くのは止めておきましょう。

    コメント by kitapon @ 2014.05.27 火曜日