閑話諸口

乗り物酔いの顛末_10(神はいた!)

 おお! やはり神はいた!
 無事にバスから降りた時の小生の感激がお解りだろうか。
理論的には、どう考えてもまともな状態で目的地に辿りつけるとは
思われないのに、それがどうだ!全く不可解な力によって、小生は
肉体的にも精神的にも、ほぼ平常な状態のまま、目的地に立って
いるではないか!

  中国3
   (写真は本文とは関係ありません)

 「なぁ~んだ、大丈夫じゃないですか。大袈裟に言うから心配した
のに。」と、同行した担当者が肩を叩きますが、小生は何と答えて
よいのか、言葉が見つかりません。
 後で知ったことですが、この担当者がすぐに日本の本社に連絡を
入れ、心配していた日本の関係者は皆一様に「なぁ~んだ」と思った
ようです。

 感激に浸る小生には関わりなく、一行はすぐに敷地内にある工場
に入り、予定より時間が遅れていたこともあって、ほとんど休憩時間
も無しに現地での業務が開始されました。
 ここに至って小生は、自分が相当な空腹状態にあることに、やっと
気付いたのです。 だって、もうそろそろ夕方になろうというのに、考え
てみれば朝起きてからほとんど何も食べていないのですから。

 最初のうちは、「なあに、時間を見つけて工場内の売店か自販機で
何でもよいから腹に入る物を探せばいいだろう」 と高をくくっていたの
ですが、すぐに小生は自分の考えがものすごく甘かったことに気付か
されました。
 工場内には売店どころか飲み物の自販機さえも見当たりません。
最悪の場合はちょっと外に出て_などと暢気に考えてもいたところが、
外には、コンビニどころか建物らしきものは何も見えないのです。

  中国4
   (写真は本文とは関係ありません)

 喉が渇いて我慢できなくなった時は、許可をもらって事務室の中を
通り、台所のような一角で、インスタントコーヒーを作って飲むことが
できたのですが、食いものは一切入手できません。

 _ ここで例のビスケットが役に立ったのです。 
 結局、6時過ぎに業務が終了するまで、時々そっとポケットから取り
出したビスケットを齧る事で、何とか飢えをしのぐことができました。

 さて、業務が終了するとすぐに、「さぁ宴会だ!みんな乗った乗った」
というわけで、何台かの車が用意され、てんでに出発となりました。
 小生は8人乗り程度の車で、 「いや、私は後ろの席はだめで...」
などと言ってる暇もなく後部座席に押し込まれ、すぐに発車します。

 まずい!! これはひどい目にあうぞ!!
空腹で、疲れ果てた体調で、後ろの席に座らされ、見知らぬ暗い道を
まるで目隠しをされたような状態で走る_という、絵に描いたような
最悪な状況です。 せっかく神の御慈悲によって、奇跡的に無事に
中国に辿りついたというのに、これでは何もならぬではないか! 

 乱暴な運転にのけぞりながら、 小生はこの時、深い絶望の淵に
沈んでいくのを感じていたのです。 (この項つづく)

 

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