閑話諸口

乗り物酔いの顛末_9(宿敵との死闘)

 上海空港に到着したときの気分は、思ったより良いようです。
次は問題の高速バスに乗るわけですが、バスの発車までほとんど
時間がありません。とにかく空港の売店で飲み物と食べ物を買って、
と思ったのですが、飲み物はともかく食べ物がなかなか見つからず、
なんとかビスケット風の菓子を買いました。のちにこの菓子が命綱に
なろうとは、この時点では思いもよらなかったのですが...。

  空港売店

 さて、いよいよ最大の宿敵であるバスに乗り込みました。もちろん
小生の席は一番前の見晴らしのよい席です。この席を取るために
充分に根回しがしてあったことは言うまでもありません。

 バスが動き始めました。
小生は座席に浅く座り、背中を背もたれから離し、両足を開いて体を
充分に安定させ、両手は席の前にある手すりのような物をしっかりと
掴んで、肩の力は抜くが臍下丹田には力をいれ、上体を真っすぐに
保ってバスの進行方向に正しく正対する... というような、小生が
小さいころから何十年にもわたって体得してきた「秘術」を尽くして、
今から4時間余に及ぶ死闘の始まりです。

 バスは_ というと、高速バスとは思えぬような騒々しいエンジン音
を響かせながら、他の車に抜かれたり、抜かしたりする場合は必ず
クラクションを数秒間鳴らし続けるなどと、まるで暴走族体験ツアーと
でもいうような様子で、死闘を盛り上げているではありませんか。

  高速バス1

 ところが_???   何か変です。
バスが走り出して以来ずっと、小生は騒音の合間に不思議な雰囲気
を感じ始めていました。
 それは、うまく説明できないのですが、不安とか焦燥というような
ものとは正反対の、例えば平静とか安穏といったような、つまり
とても落ち着いた気分になってきたのです?!。

 バスに乗ってこんな気分になったのは、生まれて初めてであるような
気がします。 何か小生の体調と気持ちに「余裕」が感じられるのです。
 最初のうちは気のせいかなと思っていたのですが、30分経っても、
1時間経っても同じ感覚のまま変わりません。

 試しに窓の外の景色を眺めたり、必殺の防御姿勢を崩したり、
先ほど買った飲み物を飲んでみたりしても全然大丈夫です。
(もっとも、ウーロン茶として買ったはずの飲み物は、すごく甘くて
 思わず吐き出しそうになりましたが)

  高速バス2

 何だかわかりませんが、とにかく車酔いは全然しそうにもない気配
なので、小生は嬉しくなってしまって、「きっと、遠足に出かけた時の、
普通の(酔わない)子供の気分はこんなんだろうな」などと考えながら
車の中を見回したり、窓の外を眺めたりして、すっかり旅行気分に
浸ったのでした。

 しかし、これは一体どうしたわけだろう。 (この項つづく)

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コメント

  1. mako より:

    そうです。
    その先がとても知りたいのです。

    いつも面白く読ませて頂いておりますが
    次回がとっても楽しみです。

  2. kitapon より:

     実はこのところ毎回、今回でこの話は終わりにしよう_
    と思って書いているのですが、ついつい長くなってしまって
    ちっとも終わらないのです。

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