そもそも、何故我が家で茶会を開こうなどと思い至ったかと言うと_
わたくし事で恐縮ですが... この年、よんどころない事情があって、
我が家は引っ越しをしなくてはならなくなりました。
もともと貸家にしていた2階建てに、結局自分たちが住むことになり、
それまでの借家を引き払って移って来たという解りにくい話です。
1階は小生の仕事場に、2階は住居に割り当てたのですが、少々
手狭で、引越しの時に持ってきた荷物が収まりきらず、しばらくは
荷物の隙間で生活することを余儀なくされました。
ここには、ひと間だけ和室があったのですが、狭い家とて、ここに
箪笥をおいて、ついでにテレビも... などと考えているうちに、ふと
無謀な考えが浮かんできたのです。
それは、この和室を茶室にしたらどうだろう_ という思いつきです。
ただでさえ部屋数が足らず、どうしたものかと思い悩んでいる時に、
いってみればもう一部屋、非実用の部屋にしようというのですから、
これは正気の沙汰ではありません。
しかし、一旦思いついてみると、この馬鹿な考えはどうしても小生と
カミさんの頭から消え去らず、この機会にとにかく炉だけでも切って
(つまり畳の一部分を切って茶道の釜を置けるようにして)おこうという
ことになったのです。
この時点では、まだ大した考えもなく、後からでは大変なので、
取り敢えず、今、炉を切っておこうというぐらいの気持ちでした。
この時に初めて知ったのですが、2階に炉を切るというのは、結構
難しい条件があり、思ったよりも簡単ではなかったのですが、まあ
とにかく、出来上がってみると、これだけのことなのに、何だか少し、
茶室の雰囲気が出てきたような気がします。
さて、こうなるとだんだん欲が出てきます。
せっかく炉を切ったのだから、畳も茶道用の物にしたいとか、
襖に模様があるのはどうかとか、窓がアルミサッシでは面白くない
ので、内障子を付けよう_ などと、きりがありません。
そして、その後今日に至るまで...
とうとうこの部屋は荷物を置くことも寝転んでテレビを見ることもできぬ
特別な部屋、つまり我が家にとっての「茶室」になってしまったのです。
よく子供達が「どうして今度の家は、こんなに狭いの?」と、文句を
言います。 (つづく)