茶事とは難題_8(ふて寝 のち悟り)

 深い絶望感に襲われ、進退きわまった小生は、茶道の入門書を
放り出し、しばらくの間、茫然自失の態でふて寝していたのです。

茶道テキスト3

 ... まあ、いいでしょう。
食事の手順を間違えたぐらいで、取って喰われる訳じゃなし。
もともと全くの素人が、急にヴェテランを気取ろうとしたところに
無理があったわけです。

 そう_ 素人は素人らしく恥をかけばよいではないか!

 この考えに至った時、小生は何というか、暗闇で光明を見出した
ような、悪夢から覚めたような、清々しい気分になったものです。
言ってみれば一種の悟りを得たようなもので、やはり人生は
苦労の先に果実がある。 悩んだからこそ真実を得る。
 (それ程のことでもありませんが。)

 他人に迷惑をかけたくないのも確かですが、その根底にはやはり
自分が恥をかきたくない、よい格好がしたいという気持ちが強かったに
違いありません。 さらに言えば、何年も稽古しているヴェテランに
混じって、何ら遜色ない動きを見せたいなどと不遜なことを考えていた
ような気がします。

 「あら、あの方どちらのヴェテランでございましょう」
「なんでも、お師匠さんのご紹介でいらした方で、お稽古などされた
ことがないと伺ってますわよ」
「まあ、それにしては何と見事なお振舞い...」
などという場面を無意識のうちに夢想し、ほくそ笑んでいたとすれば、
不遜というより、間抜けといった方がぴったりするかもしれません。

 失敗をしてはいけないと思うから無理をしたり焦ったりするわけで、
最初から、必ず失敗するものだと考えていれば、もう怖いもの無し
のはずです。

茶事イメージ 

 茶会の当日、道を間違えて遅刻をし、気がついたら致命的な忘れ物を
しており、最初に挨拶しようとして、とんでもないことを口走ってしまい、
運ばれた料理を受け取ろうとしたら、手をすべらせてひっくり返し、
立とうとしてよろめいた拍子に隣の人の頭に手をつき、取り損ねた菓子は
コロコロと部屋の中央へ転がり、抹茶はすっかりこぼして服はずぶ濡れ...

 このくらいの覚悟をしておこう。
これより少しでもましであれば、上出来ではないか。 (つづく)

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