キャンディーズ 音楽

キャンディーズ_7(ランちゃん路線)

 キャンディーズのスタッフには、実力派と言われたグループサウンズ「アウト・キャスト」出身のメンバーが多いが、4枚目のシングル「なみだの季節」を作曲した穂口雄右(ほぐちゆうすけ)もその一人であった。
 彼は、当時の邦楽の状況を何とか打破したいという使命感のようなものを持っていたようで、(同じく元アウト・キャストの)レコードディレクターの松崎澄夫からキャンディーズの曲を依頼されると、今までの邦楽には無かった新しい雰囲気の楽曲を制作しようとした。また、キャンディーズの音楽的な教育も任せられると、彼女たちを単なるアイドルグループとしてでなく、アーティストとして通用するように熱心に指導し、彼女たちもそれによく応えて実力を伸ばしていったようである。

(YouTube 2sozema より)

 さて、次の5枚目のシングル曲の制作にあたっては、(誰の発案かは諸説あるが)センターを「スーちゃん」から「ランちゃん」に交代し、しっかり者の長女を2人の妹が両側から補助するといったイメージにして、ランちゃんの「お姉さん的」魅力を全面に打ち出すという全く新しい路線に変更した。
 曲は今までの日本的な無難なものから、穂口雄右の、当時としてはかなり洋楽的な曲を採用し、千家和也の手になる歌詞も、「年下の男の子」というタイトルも、新イメージにぴったりであった。しかもこの曲は何とコーラスがほとんど入っておらず、ほぼランちゃんのソロボーカルで、時々他の二人がユニゾン(同じメロディーを歌うこと)で参加するという、それまでのキャンディーズの曲ではあり得ない構成で、ここでも大幅な路線変更がなされている。
 こうして_ 入念な計画の下、ついに5枚目のシングルが発表された。

 ここまで力を入れて解説したからには、「年下の男の子」の動画をもう一度紹介せざるを得ないでしょう。今回はレコード発売直後のTV出演時の様子(1番だけ)で、ランちゃんはまだセンターに慣れなくて、かなり緊張していたのではないかと思われる。

≪「年下の男の子」YouTube 20130111ms より≫

《 中 期 》(1975年春~1977年夏)
 1975年2月に発表された「年下の男の子」は思惑通りにヒットし、オリコンで週間9位を記録した。
まだ大ヒットとは言えないが、それでも以降キャンディーズは一気に人気者になり、TVには引っ張りだこ、コンサートは満員で、NHKの紅白歌合戦にも初出場することになるなど、トップアイドルへの道をひた走ることになった。
 以降、この「お姉さん路線」は(シングル曲としては)最後まで続けられ、スーちゃんの「可愛い子ちゃん路線」には2度と戻ることはなかった。もちろんコンサートなどではスーちゃんのソロ曲もあったわけだが、TVの通常の歌番組では、(シングル曲を歌うのが普通なので)ランちゃんばかりが目立つようになり、あたかも「伊藤ランとキャンディーズ」と改名した方がしっくりくるようなイメージで、当然これを残念に思う青組のファンも多かったようである。

 この頃になると、キャンディーズは熱狂的なファンを持つようになる。特に当時では珍しい大学生のファンも多く、ついには有志による(日本初と言われる)全国組織型ファンクラブ「全国キャンディーズ連盟(全キャン連)」が組織された。(ファンクラブば、プロダクション側が作って、ファンを「集める」のが普通)
 また、声を揃えてメンバーの名前などを叫ぶコールや決まったタイミングでテープを投げ入れるなどのいわゆる「オタ芸」も、(メジャーなアイドルでは)キャンディーズが元祖であると言われている。

10,000人カーニバル Vol.2 1976年10月(OTONANO より)

 次に紹介する動画は、1976年10月に「全キャン連」主催で開催された「キャンディーズ10000人カーニバル Vol.2」で、蔵前国技館 に13500人も動員したライブコンサートの様子である。曲は1976年春に発表された、中期の最大のヒット曲(オリコンで3位)の「春一番」であるが、この曲は殆んど3人のユニゾン(複数人でひとつの旋律を歌うこと)だけで歌われている。コーラスグループにとってユニゾンを正確に歌うことは非常に大切と言われているが、これだけ見事にユニゾンを聴かせるグループは滅多にいないように思う。

 ということで、MMP(後述)の激しい演奏をバックに、赤青黄三色のテープと「ラン(スー、ミキ)ちゃんコール」が飛び交う熱狂のライブを_どうぞ。

≪「春一番」YouTube lightyellowsky より≫

 ところで、穂口雄右はキャンディーズの重要な楽曲の多くを手掛けており、彼無くしてはキャンディーズの成功も無かったと言えるかもしれないとも思う。但し、その自己中心的な言動や盗作疑惑などもあって、小生があまり彼を好きになれないのも事実です。
 だが、それにしても_ 「なみだの季節」「年下の男の子」「春一番」は無論のこと、先に(小生が名曲と思って)アルバムの中からご紹介した「帰れない夜」や「バイバイセンチメンタル」までも(気が付けば)すべて穂口雄右の作曲であり、その才能には驚くほかありません。

 (この項つづく)

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コメント

  1. マコ より:

    ユニゾンで歌う事がそんなに難しいとは驚きました。
    最近見つけた「あなたに夢中」は
    コーラスがいっぱいで可愛らしく好きな曲です。
    でもユニゾンは大事なんだ・・・

    • kitapon より:

      難しいというか...
      ユニゾンがしっかり出来なければコーラスうまくいかないよ、
      というようなことらしいです。

    • kitapon より:

      そう言えば、見事にユニゾンを聴かせるグループとして、
      「ザ・ピーナッツ」は別格ですが。

      • マコ より:

        ザ・ピーナッツは お饅頭みたいな時から
        スリムになってからも大好きでよく聴いていました(笑)

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